最近、テレビでも紹介されることの多くなったピロリ菌は40〜50歳代以上では約80%の日本人が菌を保有しているといわれています。このピロリ菌は胃の中でしか生息できませんが、ウレア−ゼという物質を産生して胃や十二指腸の潰瘍や胃がんの発生に大きく関与することがわかり、2000年11月にピロリ菌の除菌療法が難治性の胃潰瘍あるいは十二指腸潰瘍に対する治療法として認可されました。
私の経験でも、従来の治療薬で全く胃潰瘍が治らなかったという患者様にピロリ菌除菌療法を行ったところ、劇的に胃潰瘍が消えてなくなったということがあり、その時はピロリ菌除菌療法は本当に凄いなと思いました。
|

図1 |
図1:みぞおちあたりの痛みのため食事が充分に摂れないと訴えた患者様。内視鏡検査で胃を精査したところ、胃潰瘍の好発部位のひとつである胃角部に深い潰瘍が認められました。 |

図2 |
図2:最強の制酸剤と呼ばれるプロトンポンプ拮抗薬を処方しましたが、症状は一向に改善しませんでした。お薬を飲み始めてから3ヵ月後に内視鏡を行うと、胃角部の潰瘍は小さくなっていましたが、まだ依然として残っていました。 |

図3 |
図3:ピロリ菌除菌療法を試みたところ、除菌療法が終了すると間もなく胃の痛みの訴えはなくなり、1ヶ月後の内視鏡検査では胃潰瘍が瘢痕組織を残して治癒していました。 |
このケ−スはピロリ菌除菌療法後が驚くほど奏効したと言っても過言ではないと思いますが、だからといって胃の症状を訴える患者様に猫も杓子もピロリ菌除菌療法ということではいけません。胃の不快感を医者に訴えたところ、ピロリ菌がいるからという説明だけでピロリ菌除菌療法を受けたとか、胃がんを予防しましょうねと言われてピロリ菌除菌療法を受けましたという患者様の話をよく聞きますが、実際には適応外の慢性胃炎の患者様にかなりの割合でピロリ菌除菌療法が行われたのではないでしょうか。
私は胃潰瘍あるいは十二指腸潰瘍の患者様のピロリ菌除菌はあえて慎重に対応したいと考えています。というのは、ピロリ菌を除菌した後に少数ながら逆流性食道炎が発生するという問題があるからです。この問題をさらに推し進めて考えると、逆流性食道炎に関連して発生するタイプの食道がんが存在するということに繋がり、しかも逆流性食道炎の多い欧米人ではこのタイプの食道がんが多くみられるという問題に突き当たります。ピロリ菌除菌療法が解禁されてからまだ6年しか経っていませんが、このような問題は充分に議論されているのでしょうか?いまのところ、まだ納得できる答えがないように思えます。
おおはし医院はピロリ菌除菌療法の適応をしっかりと考え、患者様に最良の治療法をご提案したいと考えています。 |
 |